「俺が育てる」と言われ仕事なくなる恐怖から断れず…被害女性が告白、映画界の性被害の実態と背景【news23】

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最近、映画業界で性被害を受けたという被害者の声が相次いで報道されています。今回私たちは被害を訴える女性を取材。その実態と背景について話を聞くことができました。

■「立場利用され断れず」望まない性行為を強いられる被害者

山本恵里伽キャスター
「こんにちは。よろしくお願いします」

匿名を条件に、私たちの取材に応じてくれたのは、俳優として活動している30代の女性です。まだ学生でデビューしたばかりの頃に業界内の上の立場の男性から性行為を求められたといいます。

性被害を受けた俳優
「飲み会あるから来ない?って言われて…」

山本キャスター
「(加害者)本人から?」

性被害を受けた俳優
「本人からです。『期待してる』『俺が育てる』みたいなものも色々言われすぎて、全く性行為したくなかったけど 『家で飲もう』となって、断れないどうしよう…となって性行為をされてしまった」

断ると今後の仕事に影響するのではないかと恐れ、望まない性行為を強いられたと言います。しかし、この10年ほど「被害を受けた」と声を上げることはできませんでした。

性被害を受けた俳優
「顔の広い方だったので、これっておかしくないですかって言ったら『あいつ使わないで』みたいなことを周りに言いふらされて、仕事がなくなる恐怖がめちゃくちゃあった。性被害を受けた子たちが友達にもたくさんいたこともあり、声を上げても、もみ消されてしまうだろうなって」

それでも今回、取材に応じてくれた理由を聞くと、涙ながらにこう答えました。

性被害を受けた俳優
「今声を上げている人も被害を受けたうちの一握りだと思っていて、大体の人が声を上げることもできない状況になっていると思う。私も知り合いで搾取されてしまった人、4人くらいいるけど、“私はもう忘れたい過去だから頑張ってね”みたいに言われたので、私もダメなことはダメって言って、勇気を持って声を上げてくれたり、ノーと言える人が増えたらいいなと思ってここにいる」

■「黙殺したくない」動いた作家たち

当事者の勇気に映画の原作を手がける作家たちも動きました。18人が連名で声明を出したのです。

▼作家たち18人の声明文

2022年4月12日
文責:山内マリコ 柚木麻子
賛同者:芦沢央 彩瀬まる 井上荒野 小川糸 窪美澄 津村記久子 西加奈子 蛭田亜紗子 ふくだももこ 三浦しをん 湊かなえ 宮木あや子 村山由佳 山内マリコ 山崎ナオコーラ 唯川恵 柚木麻子 吉川トリコ

声明
「映画制作の現場での性暴力・性加害が明るみに出たことは、原作者という立場で映画に関わる私たちにとっても、無関係ではありません。声をあげてくださった方々の勇気に応えたく、私たちは、連帯の意志を表明します」

デビュー作「人のセックスを笑うな」が映画化され、話題となった作家の山崎ナオコーラさん。賛同者として声明に名を連ねた1人です。

小川彩佳キャスター
「声明のどの部分に心を寄せたましたか?」

山崎ナオコーラさん
「責任感を持ちたい。そこを特に重要に思っています。権利を渡した後も何かを知った時にはストップをかける力が原作者にはありますし、何らかの行動を取ることはできるんだという」

小川キャスター
「自分の身の回りでできることをやっていこうという、そうした思いがある?」

山崎ナオコーラさん
「あなたの話を信じてます。黙殺したくないです、と伝えるだけでも一つの連帯で意味がある」

著書「伊藤くんAtoE」が映画化された作家の柚木麻子さんは声明文を作成したメンバーの1人です。

声明文の文責・柚木麻子さん
「私たちであれば声を比較的発しやすいのではないか。契約の段階から見直していくことで抑止力になるのではないかなと」

■責められる「セカンドレイプ」の問題

被害者が声を上げにくい、もう一つの大きな理由として被害者にも責任があると責められる「セカンドレイプ」の問題があります。
被害を受けた女性は「セカンドレイプ」をなくし、声を上げやすい社会になってほしいと願っています。

性被害を受けた俳優
「『なぜ家に行ったのか』とかそういう言葉で、なぜかいつも被害者の話になる。そんなの自分が一番分かっているし、それができなかったからこういうことが起きてしまったのに、それを言うと声に出せなかった人たちがさらに声を出せなくなってしまう。それが二次加害に当たるということも日本でもっと認知されてほしい」

■映画界の性被害「見過ごしてきた悪しき慣習」

小川キャスター:
山本さんは被害にあわれた方の話をどう聞きましたか?

山本キャスター:
今回、伺った方は実際に被害にあったのは10年ほど前のことですが、その時のことを昨日のことのように鮮明に覚えていらっしゃるんですね。そして思い出せば思い出すほど目からは涙が溢れてくる、本当に深い傷となっているんだなと実感しました。そしてその方が強く訴えていたことの一つとして、“日本の映画界には俳優を守るルールがないんだ”と。“そのルール作りを早急にしなければならない”ということだったんです。それにつながるかもしれない一つの動きとして3月18日、是枝裕和監督ら映画監督の有志6人が声明を発表しました。

「私たちは映画監督の立場を利用したあらゆる暴力に反対します」と題しまして、「私たちには、みずからが見過ごしてきたあしき慣習を断ち切り、すべての俳優、スタッフが安全に映画に関わることのできる場を作る責任がある」としています。今後、改善に向けたアクションをしていくということです。この声明には「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督や俳優の仲野太賀さんなど300人以上の方が賛同しているということです。

小川キャスター:
被害者が声を上げた時にただ傍観することも「セカンドレイプ」につながるんだと作家の山崎ナオコーラさんはおっしゃっていました。私たちとしましても、これからも勇気を持って声を上げてくださった方の言葉、そして声なき声に耳を傾けてまいります。

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